がん予防情報相談部は、栃木県立がんセンターの地方独立行政法人移行に伴い、新設された部署で、 疫学研究課とがん情報相談課の二つの課からなります。
その活動をご紹介します。
栃木県立がんセンター院内がん登録、栃木県地域がん登録・全国がん登録を行っています。
疫学とは、人の集団における病気のおこりかたや広がりかたを調べて、病気の原因そのものや、重症度(ひどさ)あるいは頻度(おこりやすさ)を決める原因をさぐる医学の一分野です。簡単に言うと,一人の人が肺がんになるかどうかは1か0(なるかならないか)ですが、千人、一万人の集団を観察することによってどのくらい発病するか推測できます。 臨床医学(病院の診療)などと協力しながら病気の原因を調べる場合、病気や健康に関する情報を集めて整理し、よりよい医療やがん対策を実現するためのもととなる資料作りを行う場合もあります。
今、日本人の2人に1人はがんになるといわれており、3人に1人はがんが原因で亡くなっています。
がんになるということには、「生まれつきの原因」と、タバコや食生活などの生活習慣や、微生物(細菌やウイルス)などの「生まれたあとの原因」と、どちらがどれほど関係しているのかということを理解することが重要です。 「生まれつきの原因」が大きな役割をするがんもあります。 しかしながら、多くのがん発生には、「生まれたあとの原因」が強く関係していることが考えられています。
疫学研究では、病気と、予想される原因や予防因子(病気をふせぐ原因)との間に関係があるのかどうかを検討するために、情報を集めます。 次に、もし関係が見つかれば、それが因果関係(原因と結果の関係)であるかを考えます。 そして因果関係の「強さ」と「大きさ」も検討します。関係がある修正可能な予防因子(生活習慣)を変化させることによって病気になることを予防します。
疫学研究は、個人と社会における病気の予防、早期発見と早期治療、患者さんのQOL(安心、快適さ)、医療環境の整備(病院の受診のしやすさ等)に少しでも役立つことを目的としています。
一次予防(禁煙や食生活改善、B型肝炎の母子感染予防、適正な輸血によるC型肝炎予防など、病気の発症予防対策)や二次予防(死亡率減少効果があるとされている部位のがん検診など早期発見対策)は根本的対策であり重要です。
患者さんや家族の方にとっては、治ること、再発しないこと、痛みが少ないこと、がんに振り回されないことが大事です。 これまでの疫学研究は、主にがんの原因をさぐるものが中心でした。 これからはがんになってからのこと、例えば治りやすいがんと治りにくいがんとの違いを調べ、再発しやすい原因を調べることも重要になってくると考えられます。患者さんや社会からの要望を医療側が適時・適切に知る仕組みと、医療側が患者さんや社会にがん医療をわかりやすく伝え、情報を共有する仕組みを考えることも重要です。
当センターは開院以来「がんの専門病院」ということから先進的に院内がん登録を実施しており、現在も都道府県がん診療連携拠点病院という立場からも標準登録様式による院内がん登録を実施し、全国集計に協力しています。
栃木県の地域がん登録は、平成5年度から事業を開始し、平成20年度から当センターが実務を担当しています。 がん対策を実施するためには、がんの実態把握が必要であり、その中心的な役割を果たすのが地域がん登録です。 がんの実態を表す指標として罹患率、死亡率、および生存率があります。 地域がん登録は、対象地域(栃木県)に発生したすべてのがんを把握することにより、がんの罹患率と地域レベルの生存率を計測する仕組みです。2016年罹患症例より、全国がん登録に移行しました。 世界のがん登録(五大陸のがん罹患 CI5)やCONCORD研究(世界のがん生存率研究)に協力しています。
がん情報相談課では、がん相談支援センターと患者サロンの運営を行っています。
がん相談支援センターは、全国の国指定のがん診療連携拠点病院などに設置されている「がんの相談窓口」です。患者さんやご家族だけでな く、どなたでも無料でご利用いただけます。わからないことや困ったことがあればお気軽にご相談ください。
平成26年4月に「患者サロン」を開設しました。
がんの治療中や療養中においては、いろいろな悩みや不安が出てきます。
そこで、患者さんやご家族の方同士が、気軽に語り合い、交流できる場として開設しました。
患者サロンでは、当センターの専門スタッフが「がん」に関する様々な情報をテーマに基づいてお話しする「ミニレクチャー」、リラックス法などを体験しながらご参加いただいた方同士で語り合う「リラクセーションの体験と語り合い」や治療中の皆さんの生活を支えるための「ウイッグ・補正下着の展示会」、「アピアランスケア研修会」など様々な活動を行っています。
不安や孤独な気持ちが少しでもやわらぎ、病気と上手に付き合っていけるきっかけになればよいと考えています。お気軽にご参加ください。
当センター以外の患者さんやご家族の方も参加できます。